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  • 音楽

2016-06-10 更新

高校生の公開レッスンと講師のコンサートで弦楽アンサンブルを満喫♪

茨城県と水戸芸術館との連携で開催してきた「高校生のための水戸室内管弦楽団メンバーによる公開レッスン&ミニコンサート」は、県内各地の高校が参加する吹奏楽や弦楽合奏のレッスン、そしてレッスンとともに入場無料でお聴きいただける水戸室内管弦楽団メンバーのミニコンサート、という2部構成でご好評をいただいております。2012年に茨城県立県民文化センターの活動再開を記念して始まったこの事業は、年2回のペースで続いており、今年で5年目を迎えました。

今年度の1回目は、7月2日(土)に水戸芸術館で開催します。弦楽合奏の公開レッスンと講師によるミニコンサートです。レッスンを受講するのは、茨城県立勝田高等学校、茨城県立土浦第一高等学校、茨城県立並木中等教育学校による合同弦楽合奏団。夏に開催される第40回全国高等学校総合文化祭~2016ひろしま総文~に茨城県代表として出場するグループです。
生徒さんのなかには高校生になってから弦楽器を始めた方も多いそうですが、今回取り上げる曲はどれも本格的な作品ばかりです。

 

  • J. S. バッハ:管弦楽組曲 第3番 ニ長調 BWV1068 より ガヴォット
  • シベリウス:アンダンテ・フェスティーヴォ
  • ホルスト:セント・ポール組曲 作品29の2 より フィナーレ

これらの名曲がレッスンでどのように磨き上げられていくのでしょうか。

講師は中村静香さん(ヴァイオリン)、店村眞積さん(ヴィオラ)、堀了介さん(チェロ)の3人。水戸室内管弦楽団での活躍のほか、ソロや室内楽での演奏も数多くなさっています。
2013年6月に水戸芸術館で開催した公開レッスンでも、お三方で講師を務めてくださいました。

 

 

今回の講師によるミニコンサートでは、三人のアンサンブルで、モーツァルト晩年の充実の作品〈ディヴェルティメント 変ホ長調〉 K. 563をお届けします。

レッスンもミニコンサートも無料でお聴きいただけます。入場券は水戸芸術館エントランスホール・チケットカウンターのほか、茨城県立県民文化センター(水戸市)ノバホール(つくば市)でも配布中です。
高校生たちのレッスンと講師による演奏とで、弦楽アンサンブルをたっぷりお愉しみください。

『vivo』2016年7月号より。一部加筆)

 


公開レッスンの講習曲と講師によるミニコンサートの曲目の解説を掲載します。

J. S. バッハ:管弦楽組曲 第3番 ニ長調 BWV1068 より ガヴォット

ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(1685~1750)の《管弦楽組曲 第3番》(1722年頃)は、有名な〈G線上のアリア〉(エア)が収録されていることで人気の高い作品ですが、この組曲のなかで〈G線上のアリア〉の次に配置されている曲が、ここで取り上げる〈ガヴォット〉です。2つのガヴォット(ガヴォットI、ガヴォットII)で構成されており、ガヴォットI‐ガヴォットII‐ガヴォットI の順で演奏されます。原曲では弦楽器と通奏低音にトランペット、オーボエ、ティンパニが加わりますが、今回は弦楽合奏のみに縮小した編曲で演奏します。「ガヴォット」はバロック時代(17世紀~18世紀半ば)にフランスで流行した2拍子または4拍子の舞曲です(この曲は2拍子)。フレーズが必ず小節の真中(2拍子の2拍目、4拍子の3拍目)から始まる点に特徴があり、それによって独特のリズム感が生まれます。

シベリウス:アンダンテ・フェスティーヴォ

フィンランドを代表する作曲家ジャン・シベリウス(1865~1957)による1922年の作品。最初は弦楽四重奏で書かれましたが、1930年に弦楽合奏曲(オプションでティンパニの追加も可能)に書き改められました。シベリウスは、1920年代半ば以降、創作活動からほとんど手を引いてしまったため、この作品は実質的には彼の晩年の作と位置づけられます。題名の「アンダンテ・フェスティーヴォ(祝賀のアンダンテ)」は、この作品がフィンランドの合板工場であるサイナトゥサロ製作所の委嘱で、同社の25周年を記念して作曲されたことに由来します。荘重な主題(A)と、より動きのある主題(B)で構成され、全体は A‐A’‐B‐A‐B‐A” という形式になっています。

ホルスト:セント・ポール組曲 作品29の2 より フィナーレ

組曲〈惑星〉で有名なイギリスの作曲家グスターヴ・ホルスト(1874~1934)は、イギリスに伝わる古い音楽や民謡に関心をもち、それらを取り入れた素朴な響きの音楽を数多く残しました。〈セント・ポール組曲〉(1912~13)は、ホルストが教鞭をとったセント・ポール女学校(ロンドン西部にあり、11~18歳の女子が学ぶ中等学校)の弦楽合奏団のために書かれた作品。そのフィナーレ(第4曲)は、17世紀にイギリスで人気を博した舞曲を基調にしています。この舞曲は「ダーガソン」と呼ばれる8小節の旋律の繰り返しで、この旋律を楽器間で受け渡しながら音楽は進みます。さらに途中では有名な〈グリーン・スリーヴス〉の旋律も登場し、この2つの旋律の重なり合うところがまさに聴きどころと言えます。この曲は、ホルストの〈吹奏楽のための組曲 第2番〉(1911/1922)作品28bのフィナーレにあたる〈ダーガソンによる幻想曲〉を弦楽合奏用に編曲、加筆した作品ですので、吹奏楽ファンのなかにも聴いたことがある方は多いはずです。

モーツァルト:弦楽三重奏のためのディヴェルティメント 変ホ長調 K. 563

本来「気晴らし」を意味する「ディヴェルティメント(喜遊曲)」は、多くがパーティーや娯楽のための合奏音楽で、様々な楽器編成、楽章構成の作品があります。ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756~1791)によるこのディヴェルティメントは、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロという小さな編成の作品ですが、それでいて全6楽章という充実した内容をもっています。作曲されたのは1788年。それは有名な〈アイネ・クライネ・ナハトムジーク〉が作られた約1年後、最後の交響曲である第41番〈ジュピター〉が完成された約1か月後にあたり、まさに晩年の円熟の境地で作られた作品と言えるでしょう。しかも弦楽三重奏曲としては、モーツァルトの唯一の完成作であることも注目に値します。この作品において3つの楽器は完全に対等に扱われ、旋律を弾いたかと思えば、途中で別の楽器に旋律を受け渡して伴奏に回ったり、副旋律を絡ませたり、丁々発止の掛け合いを演じたり、局面ごとにアンサンブルのなかでの役割を頻繁に変えます。その無駄のない書法によって、3パートだけとは思えないほどの立体感が作り出されているのです。

第1楽章 アレグロ 変ホ長調 4/4拍子 ソナタ形式
第2楽章 アダージョ 変イ長調 3/4拍子 ソナタ形式
第3楽章 メヌエット アレグロ 変ホ長調 3/4拍子 三部形式
第4楽章 アンダンテ 変ロ長調 2/4拍子 主題と4つの変奏
第5楽章 メヌエット アレグレット 変ホ長調 3/4拍子 ロンド形式
第6楽章 アレグロ 変ホ長調 6/8拍子 ロンド形式

水戸芸術館音楽部門 篠田大基