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  • 音楽

2018-02-01 更新

水戸室内管弦楽団ゆかりの演奏家たちが高校生にレッスン

茨城県との連携により開催してきた「高校生のための水戸室内管弦楽団メンバーによる公開レッスン」今年度2回目のレッスンを2月10日に水戸芸術館で開催します。
今回は、これまでも行ってきた大編成吹奏楽団の全体合奏のレッスンに加えて、木管楽器、金管楽器それぞれの室内楽アンサンブルのレッスンも行います。
受講するのは、茨城高等学校吹奏楽部(全体合奏と金管五重奏)と大成女子高等学校吹奏楽部(フルート三重奏)の2校、3グループ。


講習曲は以下のとおりです。

[全体合奏] 茨城高等学校吹奏楽部
フランク(リード編曲):天使の糧
天野正道:キラキラ星変奏曲

[フルート三重奏] 大成女子高等学校吹奏楽部
チェスノコフ:妖精の絵 作品40 より

[金管五重奏] 茨城高等学校吹奏楽部
坂井貴祐:3つの情景


 

今回の講師陣は、水戸室内管弦楽団楽団員代表の猶井正幸さん(ホルン)をはじめ、岩佐和弘さん(フルート)、南方総子さん(オーボエ)、四戸世紀さん(クラリネット)、若林万里子さん(トランペット)、新田幹男さん(トロンボーン)、望月岳彦さん(打楽器)という7名。いずれもMCOに数多く参加している管楽器、打楽器の卓越した演奏家たちです。
そして今回も、公開レッスンの後には恒例の講師によるミニコンサートがございます。
高校生だけでなく一般の方も無料(要入場券)でお聴きいただけます。頑張る高校生たちの応援に、講師たちのソロ演奏やアンサンブル(水戸室内管弦楽団の定期演奏会では聴けませんよ!)を楽しみに、ぜひいらしてください。

水戸芸術館音楽紙『vivo』2018年1+2月号より)


今回のミニコンサートのプログラムをお知らせいたします。

ドゥレクリューズ:スネアドラムのための12の練習曲 より 第9番
ドゥレクリューズ:ティンパニのための30の練習曲 より 第29番
望月岳彦(スネアドラム、ティンパニ)

林光:〈七つの子〉変奏曲 本居長世の主題による
ダマレ:白つぐみ 作品161
岩佐和弘(フルート、ピッコロ)、加藤洋之(ピアノ)

サン=サーンス:オーボエ・ソナタ ニ長調 作品166 より 第2楽章
南方総子(オーボエ)、加藤洋之(ピアノ)

メサジェ:ソロ・デ・コンクール
四戸世紀(クラリネット)、加藤洋之(ピアノ)

フランク:天使の糧
猶井正幸(ホルン)、若林万里子(トランペット)、新田幹男(トロンボーン)、加藤洋之(ピアノ)


注目は最後のフランク《天使の糧》。金管楽器の講師3名と加藤洋之さんのピアノでお聴きいただきます。
この曲は、今回の公開レッスンで茨城高等学校吹奏楽部の皆さんが演奏する講習曲にもなっています。
編成が違うので、編曲も違いますが、同じ曲を講師たちの演奏でも聴けるわけで、これは楽しみです!


以下、講習曲とミニコンサートの曲目の解説を掲載いたします。

~講習曲 曲目解説~

フランク:天使の糧

フランスの作曲家セザール・フランク(1822~1890)の《3声のミサ曲》作品12のなかの1曲で、原曲はテノール独唱とチェロ、ハープ、オルガンという珍しい編成で書かれています。今回演奏される吹奏楽版は、現代吹奏楽のスタイルを確立したアメリカの作曲家アルフレッド・リード(1921~2005)の編曲。前奏-A(12小節目~)-A’(21小節目~)-間奏(33小節目~)-A(37小節目~)-A”(45小節目~)-後奏(57小節目~)いう形式で、同じ旋律型に変化を加えながら、少しずつクレッシェンドしてゆき、後奏直前の最後のフレーズでクライマックスに達します。

天野正道:キラキラ星変奏曲

世界中で歌われている〈キラキラ星〉の旋律は、もとは〈ああ、お母さん、あなたに言うわ〉というフランス民謡で、この曲をもとにした変奏曲といえば、モーツァルトのピアノ曲が有名ですが、ここでは吹奏楽の分野で活躍している作曲家・天野正道(1957~)の作品を取り上げます。短い前奏とグロッケンによるオルゴール風の主題提示(練習番号A)の後、木管楽器群による第1変奏(B)と金管楽器群による第2変奏(C)が続き、ほぼ全ての楽器がここまでのどこかで主旋律を吹けるように配慮されています。その後、全員合奏による三連符主体の間奏(D)を経て、ポップな曲調の規模の大きな第3変奏(E~G)と後奏(H)で大きく盛り上がります。

チェスノコフ:妖精の絵 作品40 より
第1曲〈ダフニスの嘆き〉、第2曲〈エルフの踊り〉、第4曲〈妖精たちの踊り〉

作曲者のドミトリ・チェスノコフ(1982~)はウクライナ出身のピアニスト。2008年作曲のこの作品は4つの舞曲からなる組曲で、ここでは3曲が抜粋演奏されます。第1曲はローマ神話に登場する半妖精ダフニスを描いたシチリアーナ(シチリア島起源のゆったりした踊り)。ピッコロの旋律で始まる第2曲は小妖精の軽快な踊り。第4曲は副題に「ケルトの妖精と太陽の妖精、ディスコの妖精」とあり、16ビートのリズムが登場します。

坂井貴祐:3つの情景

気鋭の吹奏楽作曲家・坂井貴祐(1977~)による作品。今回演奏される金管五重奏版(2010)のほかに金管八重奏版(2011)も出版されています。作品は、華麗なファンファーレの第1曲、スイングのリズムが特徴的なブルース風の第2曲、快活なギャロップ(2拍子の軽快な踊り)の第3曲からなり、第1曲冒頭の16分音符の刻みと最後の旋律モティーフ(練習番号D)が他の2曲にも織り込まれることで、組曲全体がひとまとまりの作品として形作られています。

水戸芸術館音楽部門 篠田大基

 


~講師によるミニコンサート 曲目解説~

ドゥレクリューズ:スネアドラムのための12の練習曲 より 第9番、ティンパニのための30の練習曲 より 第29番

ジャック・ドゥレクリューズ(1933~2015)は、パリ管弦楽団創設の年より同楽団の打楽器奏者として活躍した音楽家。1950年、パリ音楽院在学中には学内のコンクールにおいてピアノ部門第1位を受賞、打楽器部門では第2位を受賞するという多彩な才能の持ち主で、フランスにそれまで存在しなかった打楽器の練習曲や教則本を数多く残しました。彼の練習曲は微妙な強弱の変化や豊かな音楽性が必要とされる曲ばかりで、世界中の音楽大学やオーケストラの試験で課題曲として採用されているだけではなく、今回のようにコンサートで演奏される機会も多い曲です。〈スネアドラムのための12の練習曲 より 第9番〉はリムスキー=コルサコフの〈スペイン奇想曲〉のリズムパターンが基になっており、粒ぞろいな音が要求されます。〈ティンパニのための30の練習曲 より 第29番〉は難易度順に並べられた30曲のうち29番目で、非常に高度な技術が問われる曲です。

林光:〈七つの子〉変奏曲 本居長世の主題による
ダマレ:白つぐみ 作品161

木管楽器の中で高音を受け持ち、鳥の鳴き声を描写することも多いフルートとピッコロ。本日は鳥にちなんだ曲を2曲お聴きいただきます。林光(1931~2012)作曲〈《七つの子》変奏曲 本居長世の主題による〉は、4曲からなる〈日本歌謡を主題としたフルートとピアノのための変奏曲集〉の中の1曲。茨城県出身の詩人・野口雨情が作詞したことでも知られる〈七つの子〉の旋律が、後半では3連符で技巧的に展開されます。
自身もピッコロ奏者であり、ピッコロのための曲や教本を残したフランスの音楽家・ウジェーヌ・ダマレ(1840~1919)の〈白つぐみ〉は“ポルカ・ファンタジー”という副題が付けられている快活な4分の2拍子の曲。白つぐみのさえずりを表すかのような跳躍のある旋律が特徴的な主部、目まぐるしい6連符が続く中間部(トリオ)を経て再び主部に戻り、終結部ではテンポを徐々に上げて華々しく締めくくられます。

サン=サーンス:オーボエ・ソナタ ニ長調 作品166 より 第2楽章

近代フランスの作曲家シャルル・カミーユ・サン=サーンス(1835~1921)が、86歳で他界する年に、ソロ・レパートリーが少ない木管楽器に作品を残そうと作曲したのがこのソナタ(作品167はクラリネット、作品168はバスーンのためのソナタ)。第2楽章はピアノの分散和音にのって、「自由に」(ad libitum)と指示されたカデンツァ風の序奏と後奏を持ち、8分の9拍子の主部は牧歌的でほのぼのとした曲想、最後は消え入るように静かに終わります。

メサジェ:ソロ・デ・コンクール

フランス語で「コンクールの独奏曲」という意味を持つこの曲は、オペラやオペレッタを数多く残し、パリやロンドンのオペラ劇場の監督職を歴任、指揮者としても活躍したアンドレ・メサジェ(1853~1929)が、パリ音楽院でのコンクールのために作曲しました。3連符が多用された前半部、中低音域でしっとりと歌いこまれる中間部、カデンツァを挟み、16分音符のパッセージが続く後半部という3つの部分から構成されており、正確な運指の技術や、豊かな歌心が求められる作品です。

水戸芸術館音楽部門 鴻巣俊博
※フランク:天使の糧については講習曲の解説をご覧ください。