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  • 音楽

2017-06-21 更新

水戸室内管弦楽団メンバーによるミニコンサート プログラム公開

こんにちは、音楽部門の篠田です。今日は全国的な大雨ですね。週末は天気が良いといいなあ。
水戸芸術館専属楽団・水戸室内管弦楽団で活躍するお馴染みのメンバーが講師となって、小学生や高校生に吹奏楽を教えるセミナーが、いよいよ今週末の開催となりました。
6月24日(土)14:30開始で、高校生が受講するセミナー(茨城県、茨城県教育委員会との共催)25日(日)小学生が受講するセミナー(水戸市との共催)となっており、午前の部は10:00~、午後の部は13:30~の2部制で行います。
どちらの日も、学生はもちろん、学生以外の方も入場無料でご覧いただけます(小学1年生からご入場いただけます)。
楽器をやっている方は、レッスン中に講師から生徒へ語られるアドバイスから、演奏のヒントが得られるかもしれません。
楽器をやっていないけれど音楽が好きという方にとっては、演奏会や録音で聴く「完成形」を作るまでに演奏家が何を考えて、どんな工夫をするのか、どんなところを練習するのか、などを知ることができて、音楽の面白さが深まることと思います。
入場券は水戸芸術館のチケットカウンターで配布しておりますので、ぜひお気軽にいらしてください。

さて、24日(土)14:30開始の高校生向けセミナーでは、公開レッスンの後に、講師を務めた水戸室内管弦楽団メンバーたちによるミニコンサートもございます。
こちらも楽しみにされている方は多いことと思います。

今回のミニコンサートのプログラムをお知らせいたします。


~プログラム~

カーター:8つの小品 より 行進曲
望月岳彦(ティンパニ)

ジヴコヴィッチ:ある愛の歌?
望月岳彦(マリンバ)

サン=サーンス:ロマンス 作品37
山内豊瑞(フルート)、江上菜々子(ピアノ)

ゲディケ:演奏会用練習曲 作品49
若林万里子(トランペット)、江上菜々子(ピアノ)

ラフマニノフ:ヴォカリーズ 作品34の14
猶井正幸(ホルン)、江上菜々子(ピアノ)

ラボー:コンクールの独奏曲 作品10
四戸世紀(クラリネット)、江上菜々子(ピアノ)


今回、管楽器の講師4人が選んだ曲は、木管楽器がフランス音楽(サン=サーンス、ラボー)、金管楽器がロシア音楽(ゲディケ、ラフマニノフ)に分かれました(偶然なのですが、面白いですよね)。
4人の作曲家は全員、19世紀から20世紀にかけて活躍していて、とくにラフマニノフとラボーは同い年(1873年生まれ)、ゲディケはその4歳下、という近い関係にあります。そして4人とも、どちらかと言えば革新的というよりも、保守的な作風、伝統をも守ろうとする姿勢を示した作曲家です。
ところがこうして音楽を並べてみると、そこは「四者四様」。短いコンサートながらも、それぞれの楽器の特性、個性、魅力が味わえる、面白いプログラムになりました。


ミニコンサートの曲目解説を掲載します。

カーター:8つの小品 より 行進曲

アメリカの前衛作曲家エリオット・カーター(1908~2012)によるティンパニ独奏曲〈8つの小品〉は、この楽器の新しい演奏技法を開拓した作品として知られています。この曲集の最後の〈行進曲〉(1950/1966)では、テンポの異なる2つの行進曲を一人で同時に演奏しなければなりません。しかも2つの行進曲はそれぞれマレットの持ち方を変えて演奏されるため、演奏者にはマレットの素早い持ち替えが要求されます。

ジヴコヴィッチ:ある愛の歌?

ユーゴスラビア(現・セルビアモンテネグロ)出身の打楽器奏者ネボジャ・ヨヴァン・ジヴコヴィッチ(1962~ )によるマリンバ独奏曲(1992)。「?」も含めて正式な題名です。ジヴコヴィッチが編纂したマリンバ教本に収められた1曲で、4本のマレットによるトレモロ奏法の練習用に作られました。マリンバならではのやわらかな響きが魅力的です。

サン=サーンス:ロマンス 作品37

カミーユ・サン=サーンス(1835~1921)はフランス・ロマン主義を代表する作曲家。この〈ロマンス〉が作曲されたのは、フランスが普仏戦争に敗れた1871年。この敗北を機に、フランスではナショナリズムが高まり、音楽の分野でも独自の様式を求める運動が起こりました。そのような時代背景に生まれたこの〈ロマンス〉の優美な旋律、繊細に変化する調性は、まさに19世紀フランスの香りを私たちに伝えてくれます。

ゲディケ:演奏会用練習曲 作品49

ロシアでピアニスト、オルガニストとして活躍したアレクサンドル・ゲディケ(1877~1957)は、作曲に関してはほぼ独学でしたが、前の世代から続くロシア音楽の伝統を受け継ぎ、幅広いジャンルに作品を残しました。急速なテンポで演奏される〈演奏会用練習曲〉(1948)は、軍隊ラッパ風の歯切れの良い旋律のなかに、どこか哀愁も感じられ、彼の後の世代にあたるハチャトゥリアンなどの民族主義的な音楽も連想されることでしょう。

ラフマニノフ:ヴォカリーズ 作品34の14

ヴォカリーズとは歌詞やドレミではなく母音で歌う唱法を指し、そこから母音唱法の声楽曲を意味するようになりました。セルゲイ・ラフマニノフ(1873~1943)の有名な〈ヴォカリーズ〉(1912/1915)は、現在では声楽曲としてだけでなく、様々な独奏楽器のために編曲されて広く知られています。甘美な旋律は、ラフマニノフが愛好し、いくつもの作品で引用したグレゴリオ聖歌〈怒りの日〉をもとに作られています。

ラボー:コンクールの独奏曲 作品10

アンリ・ラボー(1873~1949)は20世紀前半のフランスにおいて、かつてサン=サーンスらが築いた音楽の伝統を守ろうとした作曲家で、今日では、先輩作曲家フォーレの名作〈ドリー〉の管弦楽編曲者として名を残しています。〈コンクールの独奏曲〉(1901)はパリ音楽院の学内コンクール用に作られた小品。即興的な序奏と穏やかな前半部分、民謡風の旋律が変奏される後半部分で構成され、全体を通してクラリネットの妙技が堪能できます。

水戸芸術館音楽部門 篠田大基