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2018-07-16 更新

水戸室内管弦楽団メンバーが高校生をレッスン! コンサートも!(7/21)

水戸室内管弦楽団(MCO)ゆかりの演奏家たちが高校生にレッスンを行い、オーケストラの演奏会では聴くことのできない室内楽やソロの演奏も披露する「公開レッスン&ミニコンサート」を、7月21、22日(土・日)の2日にわたって開催します。

茨城県合同弦楽合奏団

両日とも受講生は8月に長野県で開催される第42回全国高等学校総合文化祭「2018信州総文祭」に茨城県代表として出場する団体です。

7月21日(土)は弦楽合奏のレッスンで、茨城県立勝田高等学校、土浦第一高等学校、並木中等教育学校による茨城県合同弦楽合奏団を、中村静香さん(ヴァイオリン)、店村眞積さん(ヴィオラ)、堀了介さん(チェロ)が指導します。

レッスンではエルガーの〈弦楽セレナード〉を取り上げ、コンサートでは講師の三重奏でベートーヴェンの〈セレナード〉をお贈りします。国と時代の異なる2つのセレナードをお楽しみいただけることになります。
公開レッスンもミニコンサートも、高校生だけでなく、一般の方も無料でお聴きいただけます。入場券は水戸芸術館エントランスホール・チケットカウンター等で配布中です。

水戸芸術館音楽紙『vivo』2018年7+8月号より)

 


7月21日(土)の講習曲とミニコンサートの曲目解説を掲載します。

◎講習曲

エルガー:弦楽のためのセレナード 作品20

〈威風堂々〉や〈エニグマ変奏曲〉で知られるエドワード・エルガー(1857~1934)は、国際的に認知される作曲家が乏しかった19世紀末の英国で最も成功し、20世紀に続く英国音楽の礎を築いたと言える作曲家です。彼はシューマンやブラームスなどドイツ・ロマン派の作曲家に傾倒する一方、自国の文化や風景に刺激を受けて数々の作品を残しました。作品の題名にある「セレナード」とは、本来心を寄せる女性に想いを伝えるために戸外で演奏された曲種です。この〈弦楽のためのセレナード〉は、8歳年上の妻・アリスへの3回目の結婚記念日の贈り物として、1892年に作曲されました。全3楽章で構成され、全体的に素朴で穏やかな雰囲気に満ちています。ちなみに有名な小品〈愛の挨拶〉は、婚約時に妻に贈った作品だと伝えられており、エルガー夫妻の仲睦まじさが垣間見えるエピソードの1つです。

第1楽章 アレグロ・ピアチェーヴォレ(快活で心地よく) ホ短調 8分の6拍子
三部形式。冒頭でヴィオラによって刻まれるリズムは第1楽章全体、そして第3楽章の後半にしばしば現れる印象的なモティーフです。続いてヴァイオリンによって物悲しくも優しい主題が提示され、リズミカルに展開されます[練習記号A]。中間部で音量はpp、調性はロ長調に転じ、第1ヴァイオリンがエスプレッシーヴォ(表情豊かに)で新たな旋律を歌います[練習記号C]。再現部は冒頭部分をほぼ忠実に再現しており[練習記号F]、最後はpppで消え入るように終止します。

第2楽章 ラルゲット(ややゆったりと) ハ長調 4分の2拍子
長い序奏を持つ夢想的な緩徐楽章。序奏の最後には第1ヴァイオリンの音だけが残り、引き続き主題をドルチェ(甘く)で奏でます[練習記号I]。続いて第1ヴァイオリンとヴィオラ、第2ヴァイオリンが掛け合いをする形で主題が展開され、sf(スフォルツァンド=特に強く)からppに至る音量の変化を経てやがて静まります[練習記号K]。その後、第1ヴァイオリンが主題をオクターヴのディヴィジ(分割)で高らかに演奏し[練習記号L]、徐々に音量を落とし、静穏さをもってこの楽章は終わります[練習記号M]。

第3楽章 アレグレット(やや速く) 前半:ト長調 8分の12拍子 後半:ホ長調 8分の6拍子
調性も拍子も異なる二部から成る楽章。短い序奏に続き、ヴィオラによって快活な主題が提示され、各楽器に引き継がれ展開されます[練習記号K]。再び序奏のモティーフが奏でられ、後半部へと移ります[練習記号O]。コーメ・プリマ(前と同じように)と記された後半部では、第1楽章中間部を凝縮したかのように既出のモティーフが次々に現れ[練習記号P]、最後には柔らかな和音で曲を閉じます[練習記号Q]。

 


中村静香(ヴァイオリン)、店村眞積(ヴィオラ)、堀了介(チェロ)

 

◎講師によるミニコンサート

ベートーヴェン:弦楽三重奏のためのセレナード ニ長調 作品8

ルードヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770~1827)が作曲した弦楽三重奏のための曲はこの作品を含め全5曲で、いずれも故郷であるドイツのボンから、オーストリアのウィーンに移住後の1792年から98年の期間に作曲されました。18世紀後半に流行した旋律楽器のみによる三重奏は、後に興隆するピアノ三重奏に比べて響きを充実させることが難しく、作曲家と演奏者両者に感性と高度な技術が求められる編成といえます。この曲の初演の場所は明らかではありませんが、1797年頃に完成したと考えられています。どのパートも非常に効果的に書かれており、その中でも特にヴィオラの響きの美しさが際立っているのは、ベートーヴェン自身がボンのオーケストラやアンサンブルでヴィオラを担当していたことが関係しているのかもしれません。一般的には5楽章構成に区分されていますが、最初と最後に行進曲が配されており、7つの部分で構成されているとみることもできます。

第1楽章 マルチア(行進曲) アレグロ(快活に) ニ長調 4分の4拍子―アダージョ(ゆっくりと) ニ長調 4分の3拍子
行進曲風の主題で始まり、ロ短調の中間部を経て、再び主題が奏される三部形式。この部分を序奏として、ソナタ形式のアダージョへと続きます。行進曲から一転、ゆったりとした2つの主題が展開され、短いコーダ(終結部)で静かに結ばれます。

第2楽章 メヌエット アレグレット(やや速く) ニ長調 4分の3拍子
メヌエットは、フランスに起源をもつ3拍子の舞曲。溌剌とした踊りの音楽で始まり、流麗なトリオ(中間部)を挟んで、初めに戻ります。コーダはピッツィカート(弦を指ではじく奏法)のみで演奏され、遊び心が感じられる終わり方になっています。

第3楽章 アダージョ ニ短調 4分の2拍子
この楽章はアダージョ(A)とスケルツォ(B)がA-B-A’-B’-A”のように交互に現れる構成です。テンポの緩急、そしてニ短調とニ長調という調性のコントラストを意図して書かれています。

第4楽章 アレグレット・アッラ・ポラッカ ヘ長調 4分の3拍子
ヴァイオリンが奏でる軽快な主題の間に、3つの異なる旋律が挟まれるロンド形式。アッラ・ポラッカとは「ポーランド風」という意味で、ポーランドの舞曲ポロネーズのリズムが伴奏部分にみられます。

第5楽章 アンダンテ・クワジ・アレグレット ニ長調 4分の2拍子―マルチア アレグロ ニ長調 4分の4拍子
「ほぼアレグレットのアンダンテ」(=歩く速さよりやや速く)という指示がつけられている変奏曲楽章。16小節の主題が5回変奏されます。第5変奏で消え入るように終止するかと思うと、第1楽章冒頭の行進曲が再び現れ、全曲を高らかに締めくくります。

水戸芸術館音楽部門 鴻巣俊博


<公演情報>

高校生のための水戸室内管弦楽団メンバーによる公開レッスン&ミニコンサート
/hall/lineup/article_1485.html

7/21(土)・22(日) 14:00開場 14:30開始
会場 水戸芸術館コンサートホールATM
入場無料(要入場券)
入場券配布場所 水戸芸術館、茨城県立県民文化センター、ノバホール

講師
7/21 中村静香(ヴァイオリン)、店村眞積(ヴィオラ)、堀了介(チェロ)
7/22 岩佐和弘(フルート)、四戸世紀(クラリネット)、小山弦太郎(サクソフォン)、猶井正幸(ホルン)、若林万里子(トランペット)、呉 信一(トロンボーン)、望月岳彦(打楽器)

受講団体
7/21 茨城県合同弦楽合奏団
7/22 聖徳大学附属取手聖徳女子高等学校吹奏楽部

主催 茨城県、茨城県教育委員会、(公財)水戸市芸術振興財団